俺は小さな大学の講義室みたいな、ある教室の最前列に座っていた。
ここで江戸川乱歩のサイン会が開催されるからだ。
大ファンの俺は春陽文庫の文庫本を3冊ほどバックに入れていた。
辺りを見回しても参加者はなぜか2,30人しかいなかった。
教室についに江戸川乱歩が姿を現した。
が、なぜか見た目は岡本太郎だった。
そして2.30人しかいない参加者は
みなこの岡本太郎の姿をした江戸川乱歩の登場に興味がなさそうで、
歓声はまったくあがらなかった。
それでも俺は、急いでカバンから文庫本を取り出し
岡本太郎の姿をした江戸川乱歩の元へ駆け寄ってサインをもらった。
だが他の参加者はまったくサインをもらおうとしなかった。
その雰囲気に岡本太郎の姿をした江戸川乱歩もバツが悪かったのか、
俺にサインをすると、そのまま俺の隣の席に腰を下ろした。
俺は岡本太郎の姿をした江戸川乱歩が隣にいる喜びと、
まったく岡本太郎の姿をした江戸川乱歩に興味を示さない他の参加者への苛立ちで
どうすればいいかわからなかった。
何をはなせばいいかわからないまま、時間が過ぎた。
その間、岡本太郎の姿をした江戸川乱歩はずっとそわそわしていた。
あまりにも不憫に思った俺は2,3言、何か話しかけた気がするが、内容はまったく覚えていない。
でも岡本太郎の姿をした江戸川乱歩の話す様子はモロに岡本太郎だったのは覚えている。
その辺で目が覚めた。
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