PM21:00。
乗車率100%。
車内は老若男女問わず、自分以外の人々全員に殺意を抱いている人々で溢れている。
そんな脳内大量殺人犯達を乗せた列車は新宿三丁目に到着した。
ドアが開くとそこには65~70歳くらいの老婆が2名。
その瞬間、全ての乗客の目が老婆たちに突き刺さる。
そしてその目はこう語っている。
(見ろ、哀れな俺たちを!あんた等もこうはなりたくないだろう?
なら…今すぐここから立ち去れ!…そもそもあんた等の居場所なんてここにはもうないけどな…)
だが、この無言の脅迫的視線にも怯むことなく、
老婆のうちの1人、老婆Aは地獄絵図と化した車内に飛び込もうと、
果敢にもその足を踏み出した。
しかし、やはり気後れしたのか、もう一人の老婆Bが
「これ…乗るのぉ…?」
と老婆Aに後ろから声をかける。
だが、老婆Aはその問いかけに振り向くこともなく、こう叫んだ。
「乗るのよ!じゃないとここじゃいつまでたっても乗れないわよ!!」
…かっこいいぜ。
老婆A、あんたは正しい。
ここは東京だ。
乗車率100%の電車が自分が乗り込むことで、たとえ乗車率120%になってしまったとしても
それは決して悪ではない。
それは正義だ。
それがTOKYOジャスティスだ。
そして、そんな正義も悪もTOKYOジャスティスをも超越したかのように
地獄の底で喘ぎ続ける俺達の頭上で輝く電光ディスプレイの中では、
東京メトロのCMに出演する宮崎あおいが天使のように微笑んでいる。
俺はそれを見てぼんやりと
(あんまり宮崎あおい好きじゃなかったけどこのCMはかわいすぎるなあ…)
と思いながら、次第に意識が薄れてゆくのが分かった…
0 件のコメント:
コメントを投稿